展覧会

【展覧会感想】「憧憬の地 ブルターニュ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」国立西洋美術館

展覧会ポスター

ブルターニュという土地をさまざまな視点で切り取った絵が並ぶ同展覧会。
とても良い展覧会でした。
撮影可能な作品もあったので、今回はすべて私の撮影した写真を使用しています。

展覧会概要

「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」

会期:2023年3月18日(土)- 6月11日(日)
会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
休館日:月曜日 ※3月27日(月)と5月1日(月)を除く

多くの作品が国内の所蔵品だそうです。
現在、SOMPO美術館でもブルターニュと名の付く展覧会が開催されています。

19世紀後半から20世紀はじめにかけ、モネ、ゴーガンら多くの画家たちがフランス北西端のブルターニュ地方を訪れ、この地を作品に描きとめました。本展では国立西洋美術館の「松方コレクション」を含む、30か所を超える国内所蔵先と海外の2館からブルターニュをモティーフにした作品約160点を精選。彼らがこの「異郷」に何を求め、何を見出したのかを探ります。また、同時期に渡仏し、パリからブルターニュを訪れた黒田清輝、藤田嗣治といった日本の画家たちにも光をあてる、これまでにない試みでもあります。今回は絵画や素描、版画にとどまらず、当時の画家たちが旅先から送った、あるいは受け取った絵葉書や旅行トランクなども展示。多様な画家たちのまなざしを感じつつ、東京・上野からブルターニュへ旅してみませんか。

※会期中、一部作品の展示替えを行います。

【公式】憧憬の地 ブルターニュ 公式ホームページ より

感想 / 目的のモネ、ブルターニュそのものに惹かれる

西洋美術館の企画展は地下へ降りてから展示室内に入ります。
コンクリートの壁にブルターニュ展を飾る幕が映えていてきれいでした。

会場前装飾
会場に入る前の空間もブルターニュ展仕様

展覧会の構成は以下の通りです。

I. 見出されたブルターニュ:異郷への旅
I-1. ブルターニュ・イメージの生成と流布
I-2. 旅行者のまなざし:印象派世代がとらえた風景
II. 風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神
III. 土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち
III-1. アンリ・リヴィエールと和訳されたブルターニュ
III-2. モーリス・ドニと海辺のアルカディア
III-3. 「バンド・ノワール」と近代ブルターニュの諸相
IV. 日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし

細かく章が分かれ、いくつかの章では付随する資料も豊かに展示されていました。
私の好きな作品や興味をひいた作品とともに感想を綴ります。

展示の始まりは、展覧会タイトルとともにブルターニュの崖の写真です。
続いての漁村の様子が分かる白黒の写真や動画で、現地がどのような雰囲気の場所だったのかを知ることができます。

展覧会入り口
会場入り口

ブルターニュがフランスのどの辺りかご存じでしょうか?
北西部に位置し、温帯であるため変わりやすい海洋性気候が特徴の地域です。
降雨は定期的にあり、雲のない晴れもあるため過ごしやすい土地なのだそうです。

キャプション
展示キャプション/会場風景より

第1章 見出されたブルターニュ:異郷への旅

まず第1章では、ブルターニュ地方に画家たちが注目し始めた19世紀ロマン主義の時代の作品について。
1829年に描かれたウィリアム・ターナー《ナント》が象徴的に展示されていました。

なかでも、以下の制作年不明の鉄道ポスターが素敵で思わずカメラを向けていました。
描かれたブルターニュの情景に人は想像をふくらませて惹かれたことと思います。
現代と同じく、当時の駅舎にはこうしたポスターが並んでいたのかもしれません。
贅沢なリトグラフ。その様子を観てみたかったです。

ポスター
シャルル・ジャン・アロ 鉄道ポスター:「美しきブルターニュ:カマレのタ・ド・ボワ」


章の後半では、私の目当てでもあるクロード・モネが2作品並んで展示されていました。
私にとっては強烈に惹かれるタイプのモネ作品ではないけれど、たしかに彼の作品で、試行錯誤が読み取れるところに魅力を感じます。

絵画
クロード・モネ 《嵐のベリール》1886 年 オルセー美術館(パリ)


一見地味に見える作品ですが、嵐のさまざまなものが入り混じった色味が的確に表現されているからこそ、だと感じます。
一歩引いてみると大きな岩と波打つ海と風の激しさがよく分かります。
この嵐の情景を選択し描いた点で、海に限らず水のように捉え難い対象を描くことへの大きな関心を感じます。

絵画
クロード・モネ 《ポール=ドモワの洞窟》1886 年 茨城県近代美術館


さきの作品とは異なり、おだやかで太陽に反射しきらめく色彩豊かな海。
どちらの海もモネにとって魅力ある風景だったのでしょう。
私にとっての海の魅力は水面の変化の連続ですが、改めてその変化を描き続けたモネには脱帽してしまいます。
やっぱりモネが大好きだなと思います。

第2章 風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神

第2章では、ブルターニュ南西部の小村ポン=タヴェンを気に入ったゴーガンの作品を中心に、エミール・ベルナールポール・セリュジエらの作品も並びます。
展単会ホームページでも解説がありますが、ポン=タヴェンはその風景、古い建造物や民族衣装というモチーフの魅力があったのはもちろん、滞在費等の安さという現実的な部分でも多くの画家を魅了したそうです。

滞在費の安さという魅力までは想像できていませんでしたが、たしかに画家にとっては金銭的なことはとても重要ですよね。

美術館に来ると、まだまだ知らなかったことを新しく知ることができるし、想像できていなかったことも考える機会になって面白いです。

第3章 土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち

第3章では、19世紀末から20世紀初頭にかけてブルターニュを保養地として土地に根ざす画家が出てきた時代の作品が並びます。

絵画
モーリス・ドニ《花飾りの船》1921年 愛知県美術館


この作品は、実業家である大原孫三郎(大原美術館創設者)が1921年にモーリス・ドニから購入したものです。
ドニは大原への配慮から、日本の国旗や日本的なモチーフとしての提灯を描き込んだという説もあるそうです。
作品の行く先までが想像できる面白い作品です。

他に写真で残していたのは以下の2作品。
リュシアン・シモンの作品は陰影があるけれど明るさに比重があり、見ていて軽やかな明るい気持ちにさせてくれます。
こんな作品が居間にあったらいいな、なんて呑気に考えながら眺めていました。
どちらも松方コレクションから。

絵画
リュシアン・シモン《庭の集い》1919年 国立西洋美術館(松方コレクション)

絵画
リュシアン・シモン 《ブルターニュの祭り》1919年頃 国立西洋美術館(松方コレクション)


また、このセクションではアンリ・リヴィエールの連作「時の仙境」より《薄暮》(1901年)を観ることもできました。
北斎や広重の浮世絵に影響を受けた彼の作品は、その点ひじょうに特徴的です。
日本人である私が観ると心が落ち着くようなやさしい色使いがきれいで、とても好きな作品になりました。

第4章 日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし

19世紀末から20世紀のはじめ(日本における明治後期から大正期)にかけて、パリに留学していた日本人画家や版画家たちがいました。
彼らもさらに足を延ばしてブルターニュへ行き、その土地を描いた作品を残していました。
黒田清輝や久米桂一郎、山本鼎、藤田嗣治、岡鹿之助らの作品が並びます。

このセクションでは写真を撮っていませんでした。
撮影OKの作品もありましたが、反射や人混みでうまく撮れず。

当時ブルターニュに多くの影響を受けて描かれた作品は、どこか要素の入り混じった独特の雰囲気があるものばかりで見応えがありました。

藤田嗣治や中村義夫の旧蔵トランクも展示されていましたが、旅する画家の持ち物は風情があってなんだか素敵でした。

まとめ

今回の展覧会、ひじょうに満足しました!

国立西洋美術館の松方コレクションから約30点が展示されていましたが、常設展で観るのとは違ってまた新鮮でした。
作品そのものに違いなんてないけれど、展覧会のテーマのなかで歴史の流れで観るとより楽しかったです。

帰りに物販に寄るのも忘れずに。
西美はグッズの数が多い印象がありますが、今回も多種多様で楽しかったです。

私は大好きなクロード・モネ、アンリ・リヴィエール、ポール・シニャックのポストカードを購入しました。

図録は絶対に欲しいときに限っていて普段はポストカードを買うようにしています。
5年前くらいまでは、会期中しか買えないので記念に図録買うのが楽しみだったのですが、本棚が湾曲し始めてきてから熟考して購入するようになりました。

6月11日(日)までの展覧会です。
まだ間に合いますので、よかったら観に行ってみてくださいね。


終わりー!

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