展覧会

【展覧会感想】「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」アーティゾン美術館

一年ぶりにアーティゾン美術館へ行ってきました。
モネやセザンヌを含め目当てはたくさん。
撮影OKの作品のみ、館で私が撮ってきたものを載せています。

展覧会概要

「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 
 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」

会期:2023年6月3日(土) – 8月20日(日)
会場:アーティゾン美術館(6・5・4階展示室)
休館日:月曜日(7月17日は開館)、7月18日

抽象絵画の起源と展開を国内外から集結した約250点で展観する大規模展
アーティゾン美術館の新収蔵作品95点を一挙公開!

19世紀末から第一次世界大戦が勃発するまでの間、フランスが平和と豊かさを享受することが出来たベル・エポックの時代、芸術を生み出す活気と自由な雰囲気に満ち溢れる中、フォーヴィスム、キュビスムなどの新しい美術が芽吹いて花咲き、やがて表現の到達点のひとつとして抽象絵画が目覚めました。その後の抽象絵画の展開は、20世紀の絵画表現を牽引し、その潮流は同時期の日本にも及びました。
この展覧会は、印象派を起点として、世紀初頭の革新的な絵画運動を経て抽象絵画が生まれ、2つの大戦を経てさらに展開していく様子を、おおよそ1960年代まで、フランスを中心としたヨーロッパ、アメリカ、そして日本の動向を中心に展観するものです。
本展では、石橋財団コレクションから新収蔵作品* 95点を含む約150点、国内外の美術館、個人コレクション等から約100点、あわせて約250点の作品を、アーティゾン美術館の全展示室を使ってご紹介いたします。

*新収蔵作品・・・当館の前身であるブリヂストン美術館が休館した2015年以降に収蔵された作品を指す。

「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」展覧会ホームページより

感想 / 作品数は264点!時間に余裕をもって観に行こう

※画像のないセクションは飛ばして紹介しています

アーティゾン美術館は東京駅八重洲中央口から徒歩5分の場所にあります。
東京駅を挟んで丸ビルや新丸ビル、KITTE丸の内など商業施設が充実し楽しいエリアです。

大きなガラス張りの建物で館内にはミュージアムカフェやミュージアムショップがあり、展示スペースが広いのが特徴です。

6階→5階→4階と下がりながら、全264点(!)の作品を観ていきました。

展覧会の構成は以下の通りです。

1.抽象芸術の源泉
2. フォーヴィスムとキュビスム
3. 抽象絵画の覚醒 —オルフィスム、未来派、青騎士、バウハウス、デ・ステイル、アプストラクシオン゠クレアシオン
4.日本における抽象絵画の萌芽と展開
5.熱い抽象と叙情的抽象
6.トランス・アトランティック-ピエール・マティスとその周辺
7.抽象表現主義
8. 戦後日本の抽象絵画の展開(1960年代まで)
9.具体美術協会
10. 瀧口修造と実験工房
11.巨匠のその後—アンス・アルトゥング、ピエール・スーラージュ、ザオ・ウーキー
12.現代の作家たち—リタ・アッカーマン、鍵岡リグレアンヌ、婁正綱(ろうせいこう)、津上みゆき、柴田敏雄、髙畠依子、横溝美由紀

じっくり観るには集中力が足りなくなってくるくらい、多くの作品を観ることができます。
展示スペースに余裕があるからこその展覧会ですね。

好きな作品、気になった作品について残しておきます。

※画像のないセクションは飛ばして紹介しています

1.抽象芸術の源泉

このセクションは大好きな絵ばかりでした。
いわゆるアブストラクト・アートの源であり、あまりにも有名な作品が並びます。

絵画
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃


展覧会の最初を飾るにふさわしい、素晴らしい絵です。
生まれ故郷であるフランス南部のエクス=アン=プロヴァンスの東に位置する石灰質の山を描いています。
何度も観ている絵のひとつです。

絵画
フィンセント・ファン・ゴッホ《モンマルトルの風車》1886年


ゴッホは故郷オランダを思い起こすモンマルトルの風車を繰り返し描いていました。
なかなか実際に目にする機会がなかったので、今回観ることができて嬉しい作品でした。

絵画
オディロン・ルドン《神秘の語らい》


幻想的で色合いのめずらしい絵のように思います。
作品タイトルにマッチした印象的な絵でした。

絵画
クロード・モネ《黄昏、ヴェネツィア》1908年頃


当時67歳のモネは妻とともにヴェネツィアを初めて訪れ、この地に魅了されました。
約2ヶ月の滞在中に描かれたこの作品は、空と水面、その間にある建物すら一体化したような筆致が面白いと感じます。
また、他にない色使いに目をひかれます。

他にもエドゥアール・マネ《オペラ座の仮装舞踏会》(1873年)も素敵でした。
が、写真に撮ってみるとなんだか絵の良さが伝わらない気がして載せていません。
ぜひ、生で少し距離を置いて鑑賞していただきたい作品です。

2. フォーヴィスムとキュビスム

マティスの絵もありました。
現在(2023年6月時点)は、東京都美術館でマティス展もやっていますね。
早く観に行かなくては!

絵画
アンリ・マティス《画室の裸婦》1899年

絵画
モーリス・ド・ヴラマンク《運河船》1905-06年

絵画
ジョルジュ・ブラック《円卓》1911年


こちらは新収蔵作品です。
これも目当てのひとつでしたが、生で観ると描きこみの深さや色の濃淡の複雑さが楽しく、じっくり観ていました。

3. 抽象絵画の覚醒 —オルフィスム、未来派、青騎士、バウハウス、デ・ステイル、アプストラクシオン゠クレアシオン

このセクションだけで50点を超える作品が展示されています。

絵画
ロベール・ドローネー《街の窓》1912年


こちらも新収蔵作品です。
窓からの風景、建物を思わせる形も落とし込まれています。
この色の組み合わせ、観ていて落ち着く静けさが好きです。
ポストカード購入しました!

4.日本における抽象絵画の萌芽と展開

絵画
岡本太郎《赤い兎》1949年


第4章のうち、やっぱり一番のインパクトを残したのが岡本太郎でした。
きれいなだけではない、力強く人を引き付けるパワーがあります。

8. 戦後日本の抽象絵画の展開(1960年代まで)

絵画
猪熊弦一郎《都市計画(黄色 No.1)》1968年


ニューヨークの街が俯瞰図的に描かれているそうです。
一見したところそんな風には見えませんでしたが、この細やかさと空白のバランスが観ていて心地よく、なんとなくいいな、と思って写真に収めていました。

絵画
岡田謙三《ユートピア》1959-60年


この絵。
気になって写真に撮ったのですが、キャプションを読み飛ばしてしまいました。
あとから調べたのですがうまくヒットせず。
思い出したときにまた調べてみようと思います。

11.巨匠のその後—アンス・アルトゥング、ピエール・スーラージュ、ザオ・ウーキー

今回の展覧会でもっとも深く感銘を受けた作品がピエール・スーラージュ《絵画2007年3月26日》(2007年)です。

というのも、絵の傍には画家本人へのインタビュー映像「ピエール・スーラージュへの6つの質問」(2011年)があり、その解説がひじょうに親切で彼の考え方への理解が深められたからです。

私の視点で観た、そのときの私の前でしか存在しない光の反射。
鑑賞する私がいて成り立つ絵。

ぜひインタビューをご覧になって彼の作品を観てほしいです。
語り口の優しさや、実直さも魅力的でした。

画像の作品とともにもう一点《2019年10月2日》(2019年)の展示もありました。

※「ピエール・スーラージュへの6つの質問」と調べると国立情報学研究所より文書でまとめたPDFが公開されています

絵画
ピエール・スーラージュ《絵画2007年3月26日》2007年


黒を使用するからこそ光の反射が映えます。
私から観たこの作品は、上部に光が集まり下へ行くに従って少し反射が弱まります。
当たり前といえば当たり前の現象ですが、それを言葉にして自身の制作の要としているとことに、彼の絵画へのまっすぐな取り組みが伺えます。
彼特有の芸術へのまなざしが好き、というかんじです。

絵画
ザオ・ウーキー《18.13.2008》2008年


昨年のアーティゾン美術館収蔵作品展で観てとても気になった作品です。
言葉によって作品を規定しない姿勢で、作品タイトルは絵の完成した日を表すのみ。

私の好きな海や水面を思わせ、深いけれど透明感が感じられる青で構成されていること、ウーキーの大切にしてきた自国の水墨画の伝統も感じられること、さまざまな点で好きな作品となりました。

何回観ても良いです。

充実のミュージアムショップ

たくさんの人で賑わっていて邪魔になりそうだったので写真は撮っていませんが、アーティゾン美術館のグッズはいつも種類が多くておすすめです!

ポストカードはもちろん、美術館のロゴ入りアクリルキーホルダー、トートバッグ、ブックマーカー、Tシャツ、缶バッチ、ペン、マスキングテープ、クリアファイルなど欲しいものが見つかること間違いなしです。

アイテム数も多いのですが、多くの作品がグッズになっているところが特徴的。
自分の気に入った作品のグッズがない、ということが少ないです。

私は今回も記念にポストカードを購入してきました。

ポストカードの写真

左:ロベール・ドローネー《街の窓》1912年
右:マルセル・デュシャン《マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による(トランクの箱)シリーズB》1952年、1946年(鉛筆素描)

デュシャンも会場で観て面白かったのですが、ガラス面への映り込みがひどく上手に撮れなかったのでポストカードを購入してきました!

まとめ

自分自身がいかに第1章、第2章の19世紀末~20世紀初頭の時代の絵が好きなのか、再認識した展覧会でした。

パウル・クレー好きなのでもう少し色々な作品観たかったな。

第12章は同じ作家の作品が多すぎるかも?というのはありますが、全体的には良い展覧会だったと思います。
最近ここまで多くの作品を一気に観ることが無かったからそう感じたのかもしれません。

抽象芸術と呼ばれるものを単品でみたときの私にとってのよく分からない部分が、流れやまとまった数でみていくと、確かに潮流のようなものがあることが分かってきます。



そして。

アーティゾン美術館で次回開催予定の展覧会は山口晃さん!
とても好きな画家のひとりなので今からとても楽しみです。

アーティゾン美術館 開催予定展覧会

「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 
ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

会期:2023年9月9日(土) – 11月19日(日)
会場:6階 展示室

「サンサシオン」とはどんな意味だろう?と思い調べてみると、フランス語で「感覚」を意味する言葉だそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
好きな作品をこうして残すことができるのは楽しいです。

次行くなら混まないうちにマティスかな。
できるなら、大阪会場の冨樫義博展も行きたいところ。
東京会場は行きましたが、大阪会場限定のグッズやコラボメニューがすごく魅力的!
運営上、色々と大変で実現しないのは承知の上ですが、グッズも予約販売が通常になればうれしいです。
グッズの争奪戦はなかなか参加しづらくて。



終わり。

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